『小さなトロールと大きな洪水』はムーミンシリーズの作者であるトーベ・ヤンソンがシリーズで最初に手掛けた作品です。本作を入れるとムーミンシリーズ(小説)は全部で9巻ですが、本作ではまだ設定が固まりきっていなかったのか、ところどころよく知られたムーミンと異なる点もあります。おもな見どころは下記の通り!
- 初期ムーミンのルックスが今と違う!
- 小さなムーミンの大冒険
初期ムーミンの顔は衝撃的なので、ぜひ一度見てみてほしい!
あらすじ
ムーミンママとムーミンは冬の寒さに備え、家を建てられる暖かな場所を探していました。さらに放浪癖のあるムーミンパパは旅に出たきり二人の元へ戻ってきていません。果たしてムーミンとムーミンママは暖かな陽だまりを見つけられるのでしょうか。そしてムーミンパパと再会することはできるのでしょうか…。
初期ムーミンのルックス
私たちのよく知るムーミンはまんまるフォルムで可愛らしい顔をしていますが、本作のムーミンは大きな鼻をもつちょっと不細工な生き物になっています。今のムーミンの下あごがまるまるお鼻になった感じです。
#美の巨人
— Tuscan Blue (@tuscanblue2015) 2015年7月11日
ムーミンの特徴は顔の輪郭、ナスのように丸みをおびて突き出したアゴ……と思ってたんだけど、初期のムーミンを見たら、あれはアゴではなく「鼻」であったという衝撃。
今もあのナスの下には口があるのか?そうなのか? pic.twitter.com/7Iggt0bThd
そもそも、トーベ・ヤンソンが子供時代に弟との口喧嘩に敗れてイライラしたときに描いた考えうる限り最も醜い生き物(スノーク)の落書きがムーミンの原型となっているそうです。ムーミンといえばそのほのぼのした可愛らしさで有名ですが、初期は必ずしもかわいいキャラクターとして構想されたわけではなかったのですね…。
ちなみに本作にはスニフやニョロニョロ、ヘムルも登場します!ヘムルもその後の作品とは異なるルックスで、やっぱりお鼻が大きく、さらにちょっぴり寸胴な生き物として描かれています。ただ、スカートを履いている点はその後の作品と同じでした。
小さなムーミントロールの大冒険
訳者である富原眞弓さんのあとがきによると、トーベ・ヤンソンさんはとあるインタビューで「ムーミンのたちの大きさはせいぜい電話帳と同じくらい」と答えたことがあるそうです。本作でムーミンたちはヘビに襲われそうになったり、チューリップの妖精と一緒に旅をしたり、その小ささを存分に生かして冒険してくれます。挿絵からも小さな生き物が一生懸命旅をすすめる様子が伝わってきて、いじらしく感じられます。
印象に残ったのは謎の男の人がムーミンたちを部屋に案内してくれたシーンでした。彼はムーミンたちを人口の暖かな光が満ち、甘いお菓子をたくさん食べられる場所へと招待します。そこはレモネードの川が流れ、アイスクリームでできた雪が積もる、子供たちにとってはまさに夢のような場所です。
しかし、夢といっても悪夢なのかもしれません。人口の暖かな光は太陽と違って沈まないため、チューリップの妖精は寝ることができません。甘いものを食べすぎたムーミンとスニフは体調不良になってしまい、ムーミンママの先導のもと、男の人の場所を去ることとなります。結局男の人の目的が何なのか、いい人なのか悪い人なのかは明かされず、ただ不気味な印象のみが残りました。ムーミンってもっとほのぼのした物語だと思っていたし、たしかにこの作品もハッピーエンドなのですが、ところどころ不穏な雰囲気が漂っているんですよね…。
よく知られた作品も原作を読んでみると思わぬ発見があるものですね💨
ムーミンバレーパークを訪れてからというもの、私の中でムーミンブームが勃発しているのでさらに読み進めるぞ!